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まえがき
今回のテーマはカビ(黴)対策です。
地味で計画段階では、つい見過ごされがちですが、別荘の維持費を少なくし、将来に渡り気持ち良く使える為には、結構大切な話です。
しかし、「なぜ別荘とカビ?・・・・。」と不思議に思うかもしれません。
実は住宅と違って別荘では、建物の使用方法や材料選択、プランの違いなどから、内外部共にカビが生え易いのです。
実際、当社での修理などの相談依頼でカビ要因による物の割合は少なくありません。
まあ、その中には、経年劣化や多少の修理やメンテナンスで済む事など、仕方がない程度の事も含ますが、逆に、特に傷み易かったり、問題が多く大がかりな改修が必要な(改修出来ない)別荘は、建築時やプランの時点でもう少し配慮が出来ていれば防げると感じる建物も多いので、非常に残念に思うのです。
だからと言って、それらの問題のある建物を作った建築会社や設計した人が悪質だったからこうなった訳でも無いのです。
なぜなら、私にその対応が判るのは、当社が長い期間、新築別荘だけでなく、数多く古い別荘の改修や修理をして来て、その中で模索し積み上げてきたノウハウがあるから判るのであって、あまり別荘建築に慣れていなければ対応出来なくても無理も無いと思うからです・・・。
それに別荘を新築する際の注意点として、真面目にNETや本などで情報を得ようにも、別荘とカビについての問題提起も少なく、あったとしても、別荘のカビ対策できちんとした理由と、有効な対策を示した物までは見た事がありません・・・。
このような状況ですので、現状での別荘のカビ対策は人によっても、その対応がまちまちなのは言うまでもありません。
また、はたから見ていて「将来大変だろうな・・・」と感じる新築現場でも、さすがに1~2年で問題が表面化するのは稀でしょうから、なんとなく仕方がない的な流れになってしまうのでしょう・・・。
はじめに
まえがきが長くなりましたが、 「別荘とカビ」 については、大きな内容になってしまうので、範囲により幾つかに絞り、出来次第掲載します。
尚、本ページの特集内容はこの下の「カビの繁殖条件」から・・・、今後の掲載予定と内容は下の通りです。
② 外部編1 外部仕上げの木材と求められる防カビ性能
③ 外部編2 ウッドデッキの防腐対策
④ 室内編1 室内カビの対策と防湿工事について
⑤ 室内編2 湿気排出と換気システムの種類
□ カビの繁殖条件
カビ(黴)の生息条件は、酸素(空気)と 、温度と 、養分となる繁殖地(材料)と 、水分(湿気) です。
もちろん種類によって、乾燥に強いカビや、冷蔵庫のような低温でも繁殖するカビなどもいますが、殆どの(住宅の内外で問題になるような)カビは温度や湿度が高い方が発生繁殖しやすくなるため、この4つを条件良く揃えさせなければカビ発生や繁殖を押さえる事が出来ます。
ただ住宅としての使い方を考えれば空気や温度で押さえる事は困難ですので、実際には、材料と水分(湿気)とでの対策となります。
□ 材料によるカビ予防
材料によるカビの予防策とは、繁殖する場所の材料自体を、防カビ効果のある素材を使う、又は防カビ性能を高める処理をした素材を使う事です。 当然、効果の高い物程、カビ対策として優れた素材となりますが、実際には水分との兼ね合いであり、効果が多少高い素材では水分(湿気)も多少高くても大丈夫ですし、防カビ効果が殆ど無い素材でも、湿気を低く出来れば問題ないのです。
・ 無機質系素材
カビの栄養素にならない素材です。例えば、タイル、ガラス、窯業系サイディングなど・・・。
ただ、表面の有機質系の埃や汚れに、それを栄養としたカビが繁殖する事があり、その場合、カビ汚れのクリーニングが必要な場合も・・。
ちなみに、 浴室タイルや目地に付く石けんかすのカビ汚れや、外壁の黒墨汚れなどがこれに当たります。
・光触媒(酸化チタン)系処理材
抗菌効果のある光触媒作用を付けた材料処理です。 実際の使用商品例として、タイル(TOTOハイドロテクト)とかサイディング(KMEWの光セラ) ブラインド(タチカワ酸化チタンコート)など様々で、これらは特に本体がカビる訳ではないので、表面のカビ汚れ防止目的です。 また、ガラスに後処理する事も出来たり、外壁塗料もあります。 他にも色々な物が商品化されており、珪藻土や、内装クロス材などもあるようです。(これらは使った事はありませんが・・。)
ただ注意しなければならないのが、当然ながら光触媒作用は光・・・と言っても、特に紫外線が無いと効果無い事です。
つまり、外部や窓側の強い光が当たる所はまだ効果がありますが、別荘のような普段雨戸やカーテンで戸締まりをした薄暗い部屋や、住宅でも明るくない部屋では内装材料に光触媒機能があっても効果は期待できないでしょう・・。 また、最近は研究が進み、光触媒機能が可視光線や蛍光灯のなどの光でも作用出来るよう物になりつつありますが、基本は紫外線で効果が出る物です。 トップライトや吹き抜け上部に窓があると想定し明かりがとれてとしても、窓が断熱や遮熱を重視したLO-Eガラスの場合、紫外線が80%カットされるので、実際の効果がどれ程出るのか分かりません。 内装材で使う場合には、少なくても可視光線で効果がある新しい光触媒タイプなのかを確認した方が良いでしょう。
・ 木材の素材としての抗菌能力
木材は、比重の割りに強度が高い事や、加工や断熱性の良さ、木目の美しさなどから、建物の構造や下地、仕上げなど広く使われていますが、有機物(カビの栄養になる)素材ゆえ、カビに・・・特に腐朽菌に侵されれば腐ってしまう欠点を持っています。
しかしその欠点は、「材種」や「使用木材部位の選択」、「伐採時期」、「木材乾燥率を下げる」、などの配慮や工夫によってカビにくく出来ます。
ですから、一見同じ木材を使っているように見えても、先程の配慮をするか、しないかによって、耐久性の結果が全く異なって来ます。
例えば、高温多湿の場所に、抗菌能力の少ない材種の木材を使用すれば、数週間でカビだらけになってもおかしくありませんが、
逆に、雨に当たらず、湿気を押さえる工夫をした寺院のヒノキ赤み柱が100年、200年経っても全然傷んでいない事例は、TVでも見かける通りです。
・ 木材の塗装
適切な場所に適切な塗料を塗る事によって、木材の防腐効果を高める事が出来ます。
ただ、塗料の種類や塗った回数、塗装面木材の表面状況、また場所によっては隠れた部分の塗装状況などで、防腐性能や、効果期間が変わって来るので注意が必要です。
それと、たまに古くなった別荘などで、外部木部塗装でふさわしくない塗料が塗られているのを見かけます。 殆どがオーナー自ら塗り替えした物のようですが、塗料選択次第では、逆に木部が腐り易くなる場合もあるので、特に自分で塗装するのなら、塗料は慎重に選択した方が良いでしょう・・。
・ 木材の防腐処理加工
防腐処理加工は特に腐りやすい部分の木材(ウッドデッキや枕木など)で多く使用される防腐方法で、木材を専用工場にて、防虫防腐薬剤を圧力をかけ木材内に浸透させる加工をします。 このように処理した木材は、薬剤に浸透した表面部分の防腐性能は非常に高くなりますが、反面、浸透されなかった内部の抗菌性能は以前と変わりません。
ですから、深くまで木材に薬剤浸透させる程、防腐効果が高くなります。 尚、深く薬剤浸透させるには、杉やツガなど、吸水率の高い木材を使用する事や、木材表面にインサイジング加工(木目方向に小さな切れ込みを多数入れ、薬剤を染みこみ易くする加工)する方法があります。
また逆に、防腐処理した材料をその場でカットしたり、根田やジョイント部分の仕口加工を行えば、薬剤に浸透されない部分が出てきてしまい、その部分から腐朽菌菌糸などが入り込むため、腐る原因になってしまいます。 当社ではその対応のため、内部まで薬剤浸透しない大きさの木材では、切断や仕口加工、根田堀加工などを最初に行ってから、工場で防腐処理を行うように手順を替えて対応しています。
・ 木材の防腐対応のまとめ
上段で木材の防腐抗菌に役立つ手段を紹介してきましたが、この中で効果の高い物を組み合わせれば良いのかと言うと、そうでもありません。 例えば、米杉とかウリンなど抗菌性能の高い材種ほど木材単価が高い傾向にあるので、それだけで建物を造ると、非常に高価になってしまいます。(本人が納得すれば良い事かもしれませんが・・・) しかし使用場所の水分状況などに応じた防腐能力を持った材種や手法を選択するとか、雨水がかかりにくいよう配慮したプランにするなどで、耐久性を落とさずに建築費を抑える事が出来るのです。
注、今回の木材部分は、かなり大まかな説明のため、具体的部分は説明不足だろうと思っていますので、今後の外部編1と2で写真等を付け詳しく説明します。
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