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冬の凍結防止対策と水抜不要のシステム。 2010年4月15日
通常の凍結防止対策と問題点
「水抜き」とは
軽井沢や北軽井沢などの寒冷地(避暑地)の別荘では、冬の未使用時、室外だけでなく室内の温度も氷点下以下になるため、なにもしないと給湯器や水栓、便器、配管などに溜まった水が凍結膨張し破損してしまいます。 それを防ぐため、寒くなる前に、配管内や器具中にある水を抜いたり、抜けない部分(排水トラップや便器の溜まり水)に不凍液を入れる作業を行います。 これを水抜きと言います。
※注 一般地の配管方法では、水抜きは出来ません。 配管に勾配を付けたり、水抜き用バルブを付けたり、寒冷地専用の器具を使うなど寒冷地の別荘のみの配管方法です。 特に難しい訳では無いので別荘に慣れた、地元の水道業者なら問題なく施工できるでしょう。
水抜き委託と問題
水抜き作業は、手間がかかる上に、少しの手順間違えや作業忘れなどが器具破損につながるので、通常、「水抜き管理」として、作業を管理事務所などに代行してもらうケースが殆どでしょう。
水抜き管理の料金内容は管理会社などにより様々ですが、だいたい年間3万〜5万円位で11月頃水抜き作業をして4月頃水出し作業を行い冬期に使用する際の水抜き水出作業は別途料金とする・・・というのが一般的です。
でも、これでは冬の使用回数が増えると、別料金もかさんでしまう上、冬期の別荘使用前後、水出作業の予約や帰宅連絡(水抜依頼)を忘れず連絡しなければならず、いろいろと面倒です。(連絡を忘れると凍結破損します。)
水抜きを自分で・・・
では、自分で手順を覚えれば良いのでは?・・・。
たしかに、手順を覚えるまで時間がかかりますし、その間多少失敗もあるでしょうが、長い目で見れば一番コストのかからない方法です。
水抜き作業が面倒でなければ、それも良いでしょう。
しかし、この場合、「甥っ子がスキーで別荘を使いたいと言うので貸したが、水抜きに失敗して給湯器やウォーシュレットが壊れた。」・・・
とか、「水抜きをして帰宅したが、自宅に到着してから、全部確実に水抜き出来たか不安になった。 水抜き管理を頼んでいないので管理事務所には頼みにくい・・・。」(どちらも実話) などと言う事もあるので、自分で水抜き管理をするのも結構たいへんです。
水抜き無しの凍結防止対策。
いままで、一般的な凍結対策の「水抜き」について説明をしてきましたが、当社では、そのような面倒な事をしなくて済む、水抜不要の凍結防止システムというのを提案しています。
水抜きがいらない訳
まず、水抜きがしなくても大丈夫な理由ですが、先程で寒冷地(避暑地)の別荘で水抜きが必要なのは、水回りが氷点下以下なるからと書きました。 つまり、室内や配管周り、給湯器周辺の温度が氷点下まで下がらければ凍結する事も無い訳です。
具体的には、凍結するおそれのある給湯器をFF式にする事で室内(又は床下)に設置し、配管・排水・器具周りの温度が氷点下まで下がらない程度の暖房を行うのです。
ちなみに理屈は簡単ですけど、断熱・気密性能の低い家では少し暖房した程度では凍結してしまいますし、熱源や給湯器の配置・仕様・選定などにも多少のノウハウが必要ですので、どの施工会社でも計画や施工が出来る工事では無いでしょう。
H邸での凍結防止システムと、ランニングコスト試算
今回、具体例としてH別邸での水抜き不要システムを取り上げて説明します。
H邸では、深夜電力を利用したユニデール製のマイコン制御2KW電気式蓄熱暖房機1台を洗面・トイレなどの暖房と共に、配管や給湯器の凍結防止熱源として利用しています。
写真の洗面カウンター下側の機器で右が蓄熱暖房機、左がフルオートのFF給湯器。 手前床のガラリは蓄熱暖房の熱を洗面室の暖房用に放熱させるための物。 (この写真はメンテナンス用扉を撮影のためはずした様子です。)
写真A |
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設計時の不凍熱源の料金試算(電気料金は多少変動するので目安として参考にしたください)は以下の通りです。また、マイコン制御の蓄熱暖房機には、深夜電力帯の電気以外動かない暖房機と言うことで、マイコン割引という料金割引制度もあります。
蓄熱暖房機導入の料金割引: 蓄熱暖房機マイコン割引−130円/1kw ×2KW品 ×12ヶ月 =
−3120円 /年間 この料金が電気料金から差し引きとなります。
1ヶ月の電気料金
深夜電力蓄熱暖房機2KW(蓄熱量100%設定時)×9円17銭/1kW(東京電力・深夜電力B料金1時間分)×
8時間(深夜電力帯 23時〜7時)×0.97×30日= 4,270円/1ヶ月(蓄熱量100%設定時の電気使用量金)
これと同じように蓄熱量を落とした設定で計算します。 尚、2例しか紹介しませんが、5%刻みで蓄熱量設定可能です。
2,989円/1ヶ月(蓄熱量 70%設定時の電気使用量金)
1,708円/1ヶ月(蓄熱量 40%設定時の電気使用量金)
蓄熱暖房機導入の料金割引: 蓄熱暖房機マイコン割引−130円/1kw ×2KW品 ×12ヶ月 = −3120円 /年間 この料金が電気料金から差し引きとなります。
このことから年間のコスト試算をします。 蓄熱40%設定(1708円×1ヶ月 4月分)+蓄熱70%設定(2989円×2ヶ月 11月・3月)+蓄熱100%設定(4270円×3ヶ月 12月・1月・2月)−マイコン割引3120円
= 17,376円/年 これがH邸水抜不要システムの年間にかかるコストです。(蓄熱量を季節に会わせ設定し直す場合の目安計算として) 12月半ば〜2月半ば位までは寒いので100%設定の方が良いのでしょうが、他は気温に応じて細かい蓄熱量設定を出来ればもう少し金額も落ちるでしょう。
また、11月〜5月連休まで使用しない(設定を変えられない)場合や、蓄熱量設定をいちいち変えたく無い場合は、11月〜4月迄100%蓄熱する設定として計算しても、22,500円/年です。
H邸の冬季の使用方法
H邸の冬場の凍結防止のための維持管理の方法を説明します。
@ 11月頃 分電盤の蓄熱暖房機専用ブレーカー電源を入れ、4月半ば頃ブレーカー電源を落とす。
蓄熱暖房のブレーカーは写真の左側にある小さいブレーカー
(暖房機蓄熱量は100%で設定、年間コストは22,500円)・・・基本的には、これだけでも凍結はしません。
蓄熱暖房ブレーカー (左側) |
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しかし、安全率や省エネ、その他の理由から下記の事も行って頂くようお願いしています。
A 冬の使わない期間、換気量を少なくする。
換気システムコントローラー(写真B)を操作し 11月〜4月迄の別荘帰宅時(別荘未使用時)目盛りを1(最小)に。
別荘到着時、又は温暖な季節は目盛り2.5にあわせる (通常換気量 0.5回/h は目盛り2.5)
理由は換気による熱損失と過乾燥による仕上げ木材の暴れを防ぐためです。
※注 当社では、換気システムは、使わない間でも止めないようにお願いしています。
換気コントローラー |
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B冬でも少し暖かい時期(11月・3月・4月)は蓄熱量を落として運転
基本的に、蓄熱量100%設定で運転しなければ心配なのは、12月〜3月中旬の寒波の間です。(厳密に言えば12月中旬から2月中旬くらいだが、時季はずれでも、強力な寒波がある年も・・) あとは、少しぐらい寒いとは言え、蓄熱量設定を落としても問題ありません。
操作方法は、蓄熱暖房のリモコン(写真右側)の右側、下2つのボタン操作で5%刻みに蓄熱量設定を変えられます
蓄熱暖房リモコン (右側) |
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基本的に、冬の間の操作は @ A B に書いた事だけです。
上記の分電盤、リモコン類は全て玄関納戸に集中して配置。 操作方法はネームプリントで印刷し貼り付けてあります。
尚、H邸は数年間、別荘を利用しない場合も想定して、水抜き対応も出来るよう計画してあります。
そのため、器具は寒冷地仕様で選定し、配管には勾配を付けてあり、水抜バルブも付い |