写真のみを御覧になりたい方は下側にスクロールしてください。
今回は古く大きな建物の内装を住宅(別荘)用に全面的にリフォームをした事例です。改修工事内容は、今回紹介する居間以外にも繋ぎ和室を洋室に改装したり廊下や各個室の内装、給排水、給湯器、衛生器具取替など多岐にわたった工事になりましたが、各室工事終了時に写真を撮るタイミングを逃してしまったため、居間仕切工事後に撮った写真で掲載許可してもらった居間部分のみUPします。)
■ 工事注文の経緯
この建物、もとは20年位前に建てられたある会社の保養所だったそうですが、Hさんが不動産屋の中古物件として案内され内部の煉瓦積みの雰囲気が気に入り、少し手を入れれば良くなるだろうと思い購入したとの事。 その後、いくつかの建築業者とプランの打ち合わせをしたけれど気にいらず、ホームページで見つけた当社に連絡したのだそうです。
■ 施工前の印象・状況 私が最初に現場状況を確認した時の感想は下記の通りです。また、工事前の写真は一番下に掲載してあります。
@ 全体的に暗い感じがする。 壁、天井が薄汚れていて、床のタイルカーペット、付属の家具などの色が暗い。 また、窓は狭い訳ではないが、庇が長く低い構造のせいで、外からの光はあまり期待できない
A カビ臭い。 もう数年以上雨戸閉めきりの状態で使われていないらしく、繊維系の素材などはカビ繊維が染みこんでおり、タイルカーペットなどを洗浄して使えるような状態ではなかった
B 照明器具のデザインやプランはこのままだと格好悪すぎる。 工事前写真@参照 ちなみにHさんも同意見でした。
C 断熱性能がかなり低い。 ・・・ 煉瓦積み部分はシングル積み無断熱状態 窓はシングルガラスのサッシ 壁、天井は10kg50mmの断熱材は充填されてはいるが、施工方法が悪くあまり性能は期待出来ない様子。 当時としては特別性能が低い訳では無かったのだろうが、住宅として冬も使用するのであればこのままと言う訳にはいかないと思った。 なお、Hさんは
断熱補強は少しはしたほうが良いと感じているようだったが、まだ軽井沢の冬を過ごしていなかったので実感として感じていないようだった。
D 暖房設備はもう使える状態にない ・・・暖房は強力な灯油式温水暖房ボイラーを熱源に温水配管式のファンコンベクターや温水パネルラジエターによる室内全室暖房設備がしてあったが、鉄管を使った配管の内部がさびていて、暖房機、ボイラー共使える状態ではなかった。 でも、もし使えたとしても、熱効率の悪いシステムで断熱性能の悪い大きな建物を、軽井沢のような寒い場所で暖めるのはランニングコストを考えても少し無理があるように思った・・・。
E 暖炉の煙突抜き位置に問題。 暖房と言えば、コーン式の暖炉工事前写真A ちなみに、暖炉と薪ストーブの違いは、炉がオープンになっているのが暖炉 きっちりした蓋がついていて熱効率が良く暖房に使えるのが薪ストーブも設置してあったが、写真の通り煙突が外され背後の煉瓦部分にある煙突穴も塞がれ使えないようになっていた。 なぜわざわざこんな事をしたのかと言うと、燃す事が難しい暖炉だったから。 つまり薪に着火しようと思っても火が付かず煙が室内に充満し、新築間もない壁や天井が煤で汚れてくる・・・。個人住宅なら一度そんな経験すれば今後使わないだろうが、保養所のように不特定多数が利用すれば多少注意されても暖炉の着火を試す人もいるだろう。 そして何度となくそんな問題が起き、今後使えないように煙突を外した・・・と、まあこんな事だったのだろう・・・。 でも「なぜそんな事判るのか?」と疑問に思うだろうから説明するが。 まず、外されてはいるが、以前取り付けてあった煙突の位置は判る。 なぜなら煙突は暖炉すぐ上から曲げ、水平に背後の穴に通して、屋根軒先よりまた曲げて上に立上げる方法がない。 しかし、それでは煙が水平に流れる距離が長すぎ、また上方向の煙突も強度の関係であまり長く出来ないので、煙の上昇する力が弱くなってしまう。 ようするに煙突の取付方がまずいので、煙の排気の抜けが悪く、燃やす事の出来ない暖炉になったのだ。 (あと、煙突がが外されていた理由として、煙突が雪に押されて駄目になり、暖炉は使わないので修理をせずに外したとも考えられます。)
■ 工事方法とデザイン
天井と照明デザイン Hさんは、一応住宅としての改装だが、居間は将来、夏など長期少人数の部屋貸も考えているとの事。 だから、内装は少し高級感のあり現代的で明るく格好よくしたいと言う話だったので、再塗装や仕上げ材料の変更だけでは少し足りなく感じた。 特にBの天井からのシャンデリア3個のでの照明は今時ちょっとないだろうと思ったし、照明器具を現代的な器具に取替てもあまり代わり映えするとも思えないので、照明や配線を大幅に変更するよう考えた。 しかし、照明位置変更の配線を引き直すとしても屋根勾配に沿った天井になっているため、天井裏に登っての配線は出来ない。 そこで、現状の天井を窓側一部を除き、120mm下げる事にし下地(105×30)を組み配線スペースを確保。 またその間をCの断熱強化の意味もあり100mm高性能GWと気密シートをし、その上に石膏ボード張りビニールクロス仕上げとした、また天井もただ大きく大きくのっぺりするような感じだったので、1間(1820mm)間隔に照明レール溝を掘った付け梁を配置し、照明レールを取付。窓側にある天井の段差部分は、断面をコの字状にして間接照明用の蛍光灯を目立たないように配置した。 それと、@を解消するようにベルックスの電動トップライトも取付してみた。
床と壁仕上げ 床は@Aの事があるので桜フローリング(当社で施工した建物を案内した時にHさんがこの床材を気に入り採用)に張替。 また汚れてしまっている壁と少し残っている既存天井にはベルアートこて塗り。
窓の断熱 Cで指摘した通り断熱性能がこのままではまずい。 断熱性能だけを考えれば、シングル積み煉瓦部分を何とかするべきだが、最初に書いた通りHさんはここが気に入ってこの建物を買った訳だし、美観や予算的にも手をつけるのは難しい。 だから、先程書いた天井断熱工事以外に、開口部の断熱工事を考えた。 具体的には、ビル用アルミサッシの単板ガラスを6m空気層のLO-eペアガラスに取り替えた。 (普通のペアよりLO-eペアの方が予算はかかるが建物全体の性能を考えてもここしか手を付けられないので採用。 ペアガラスにアルゴンガス封入は空気層6mmではそれぼど効果がないし、既存アルミ枠サッシも断熱タイプに取替たい所だが、外壁部分に工事が広がり予算的にも無理)
暖房機の取替 Dについては納得してもらい、以前の暖房機の位置に新しく灯油式FF暖房器を取付るようになった。 居間と食堂(写真に撮せられなかったが・・・)部分の広間のみで75u(45帖分)の広さがあるので本来は2台必要だろうが、暖房機はとりあえず食堂部分のみとした。
薪ストーブの設置 薪ストーブは最初から希望していたが、やはり設置するとなると以前の暖炉位置しかない。Eで指摘した通り、以前の煙突位置では使い物にならない。 煙突の理想は本体より垂直方向に取付るのが理想だが、そこは屋根の谷に当たり、後付けの煙突工事では雨漏りしない施工は難しい(保養所建築時、図面段階で指摘していれば対応出来たはずである。) よって雨漏りの心配ない程度、谷より外し屋根上上煙突BOX工事をし、煙突は室内曲げで対応した。 それと肝心のストーブだが、普段施工を依頼している長野総商のショールームを案内しストーブを実際に見てもらい選定する事にした。 今回は美観だけでなく冬実際に暖房目的に使用(広い居間にFF暖房機1台のカロリー不足を補う)するので選定基準は熱効率がよく、暖房能力が高く、長寿命で使いやすい機種。 Hさんは、ハースストーン・マンスフィールドのエナメルブラウン色が気に入り取り付ける事となった。
居間の仕切 上に掲載した工事の約1年後の年末、間仕切り工事がしたいと依頼の連絡を受けた。 1シーズン生活してみた感想は、夏はすごく快適だったが、冬は少し寒いとのこと。 やはり、シングル積み煉瓦の断熱性の悪さと暖房する空間が広すぎるのが問題のようである。 そこで、冬は居間部分を折れ戸かカーテンで2つに仕切り、暖房空間を少なくしたいと言うことだった。 仕事内容を検討してみたが折れ戸の場合、吊りレールで対応するには全吊りドアの過重が最終的には天井下地かかってくるが、それ程の強度を前提に下地がしていない為、無理だと判断。 カーテンで対応する事にした。 カーテンレール受材の上は空間のつながりや解放感、明かり取りなどの意味もあり、縦吊り材の間は透明ガラスFIXとした。 なお当社はカーテンレール取付までで、カーテンはHさんが自分で用意することになった。
|
■ 居間部分内装 |
|
|
照明レールに取付たスポットライトは照明リモコンで調光可能。
写真右上の天井懐には間接蛍光灯を取付。
薪ストーブの後ろ面にある黒い板が以前の煙突穴を塞いだメクラ鉄板
以前と同じ煙突位置は美観的には良いが燃えないストーブになってしまう。
|
居間の間仕切り用カーテンレール受ガラス仕切は、付け梁の脇に連続して取付。
尚、枠縦材は美観を考え等間隔になるよう割り付けてある。
居間にに入る入り口面。
左側には食堂がある。
|
■ 工事前写真@ |
■ 工事前写真A |
工事前の居間のシャンデリア照明が見える。写真では露出の関係で、
部屋もそれ程暗く写っていないが実際はかなり薄暗い感じだった
|
処分前のコーン型暖炉 その前にあるのが、壊れて
使えなくなった暖房機の温水式ファンコンベクター
|
|