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□ 別荘での雨樋事情
一般住宅では雨樋は当然のように付いている物ですが、別荘では、自然が豊かな分、周囲の高い樹木からの落ち葉が屋根に落ち、
雨で流され雨樋が詰まってしまう事や、冬の降雪の際、屋根から落ちる雪や氷の圧力で雨樋がたわんで使えなくなるため、
それらを嫌って新築時に雨樋を付けない別荘の割合が多いですし、(取付てあっても、雨樋が役に立ってない別荘も多い・・。)
当社でも掃除等のメンテナンス面から別荘では、基本は雨樋無しにしています。
しかし、雨樋が無くすのは、それなりのデメリットもあるため、そこを踏まえたプラン計画が必要なのですが、
実際には、雨樋の無くなる事を深く考えずに、プラン作成してしまったと思える別荘も結構見受けらるので注意が必要です
□ プランと雨樋を無くすデメリット
雨樋を無くすと降雨時、軒先から大量に雨水が落ちる面(雨落ち面)が出てしまうため下に挙げるようなデメリットが生じます。
ただ、雨落ち面はプラン作成段階から考えておけば、デメリットを生ずる場所に造らなくて済む場合も多いので
別荘の外観デザインと、そのデメリットとを比較して、納得のいくプランにするべきでしょう。
雨樋を無くすデメリット
@ 玄関通路上のなどの雨落ちは、降雨時に出入りするとびしょ濡れになる。
A ウッドデッキ上だと、ウッドデッキや外壁等の木材がカビ(腐朽菌による腐り)易くなる。
雨だれがウッドデッキに直接当たると、その衝撃で塗装膜の傷みが早くなったり、デッキ面での雨水のはね返りにより外壁材が
濡れてしまいます。 それに、少しの雨の場合でも、雨だれ面の近くのウッドデッキ材の水分含有量が増えるので、次の日
少々の天候が良くてもその含んだ水分が多すぎて木材がなかなか乾燥しないなど、それらの事から、
特にカビの繁殖しやすい環境になってしまうのです。
B 別荘内が黴びやすくなる原因の1つになる
雨樋が無い事で、雨水が建物近くの地盤に浸透。 その増えた地盤内の水分が、建物基礎内部との水分差のため、基礎内部に進入
それが、建物床下部分の湿気を増やす事になり、最終的に建物内へ湿気として移動する量を増やす原因となっている。
尚、この場合、雨落ち位置はあまり関係が無い。(この詳しい対策は別荘とカビB室内カビ編で特集予定)
雨落ち面は屋根形状により、寄せ棟屋根では4面切妻屋根では2面、方流れ屋根では1面。(リンク参照・四角い家で比較)
と違うので、私の場合は@やAの部になるべく雨落ちがこないような屋根形状にするようプラン設計を心がけています。
□ どうしても雨樋を取付たい場合 (改修後付を含む)
新築でも屋根デザインなどから、雨樋が必要な場合もあるでしょうし、 また既存別荘の雨樋取付(取替)相談も珍しくありません。
(ベランダなどに雨落ちがあり具合が悪いので雨樋を付けたが雪で曲がりすぐ使えなくなったなど・・)
しかし、最初に書いている通り、通常の雨樋(特にホームセンタなどでよく見かける半丸の雨樋)は雪で押されて
雨樋金具が曲がってしまい使えなくなってしまします。 だからと言って、雨樋取付金具を増やすケースも見うけられますが、
この場合も雪の圧力で徐々に曲がってきて、復元しない事から、結局再調整が必要になって来ます。
このように、大抵の雨樋は取り付けても上手く行かないのですが、幾つかのメーカーから、このような環境でも耐えられる雨樋を販売しています。 それは、樋自体の強度があり、樋を取付る金物に金属ではなく、耐衝撃性に強いポリカーボーネート樹脂を使ったタイプの雨樋です。
尚、私は別荘には雨樋を取り付けない方向で考えていますが、どうしても必要な場合はこのタイプの雨樋を使います。
この場合、注意すべき点は、破風板に取付る適応勾配が少ない事。と価格が少し高い事、雪止めは必ず必要な事などでしょう。
尚、適応勾配が少ない理由として、通常の樋だと金属製の樋受け金具を曲げて角度合わせが出来る反面、この樋の場合、取付部品がポリカーボネート一体成形のため、カタログにある取付部品の対応角度しか対応出来ないからです。
だから、新築の場合なら屋根勾配にかかわらず破風板を垂直に施工すれば問題無いのですが、既存建物の場合は、適応勾配以外では樋取付前に、取付下地用に加工した3角断面木材などで適応角度に対応する必要があります。
それと、このタイプの雨樋でも、最低限年1回の落ち葉清掃は必要になります。 尚、オプションで落ち葉防護ネットもありますが
思った程効果が無いのでお勧めしません。
雨樋工事事例1
以前施工担当した浅間の家。 設計上、元々雨樋の無い仕様の別荘だったが、建築1年後位にオーナーから、「冬、玄関先に雪が落ち
溜まって固まり、出入りが不便なのでなんとかしてほしい・・・。」と言うような連絡があった。 他にも、冬以外のシーズンで、強い雨だれの不便さを感じているのと、デッキの雨落部分の塗料膜の傷みが早い事も確認できた・・・。
そこで、雨樋と雪止めの取付を提案し、工事する事になったのだが、現状の破風板勾配が、雨樋取付可能勾配に対応しなかったので、
取付下地用に加工した3角断面木材で角度調整をしてから取付た。 工事後、雨樋を付けてもシャープに見える事と、それまでの不便さが全て解消されたので、かなり好評でした。 それと、落ち葉清掃のメンテナンスも併せて頼まれたので、落ち葉の落ちきった時期を目安に樋清掃をしている。 ちなみに、このような樋を付けた場合、どんなに少なくても年1回以上の清掃は必要です。
雨樋工事事例2
これは当社に、雪で駄目にならない雨樋と交換が出来るかどうかの問い合わせがあった後、話がまとまり施工した事例です。
取替前の雨樋は、よく見かける鉄板を半丸型にしたタイプで、雪で押されて曲り、降雨の際は、そのたわんだ樋からそのまま雨水流れ出るのが予想されるので、雨樋本来の役目を果たしていませんでした。
案内してもらった別荘地の管理人さんによると、その雨樋も、このログハウス新築時に付いおらず、後から付けた物だそうです。
つまり、普通であれば、使用頻度が少ない別荘は、多少の不便は我慢する人も多い中、この別荘オーナーは、今回も含め、2度も、「毎年の落ち葉掃除が必要な雨樋」を取り付けた訳です。 私はこの現場を見てその理由が理解できたのですが・・・。
ここまでの写真と記事読んで、「なぜそこまで雨樋が必要だったのか?・・」について推理して見て下さい・・・・。(単純に出入の際、体が濡れやすい以上の理由で・・・。)
たぶん、今回の特集ページの記事を読めば答えに近くなるでしょう・・・・。
今回、雨樋が必要になった理由ですが、写真を見れば、建物がL型形状をしている事と、屋根の軒先が浅い(短い)事が見て取れるでしょう。 これは屋根形状に谷がありそこに集中的に雨が流れる事と、軒先が短いため、その集中した多量の雨だれがデッキで跳ね返り、壁やドアを濡らしていたと考えられます・。 写真の下3段のログが鉄板を巻いてあるのは、その雨跳ねで多量の水分を含み、ログ丸太が腐りだしたので巻いた物だと思います。 尚、ドアに鉄板が巻いていないのは、単の上手く巻けないからでしょう。 しかもこのドアは木製なので
雨跳ねからの水を含むと膨張するため、雨の多い時期はドアが開き難い状態だったのではないでしょうか。
オーナーはこのような事から建物の耐久性も総合して考えて、雨樋があった方が良いと判断したのでしょう。
しかし、これはある意味プラン段階で予想出来る事です。 もしあなたが、別荘のプランを計画しているのなら、美観だけでなく別荘をこのような視点でも考えてみてください。
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