3   高気密高断熱編  home 執筆・編集 (有)土屋建築 土屋紀明  
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3. 断熱材について

2003.11

□ 断熱材の種類について

断熱材は大きく分けてに繊維系とプラスチック系の2つに分けられます。どの断熱材も、もとの基材はガラスやプラスチックなのですが、
空気やガスを、いかに小さく、動かなく固定するかで熱伝導率が決まります。 

繊維系は、基材を細かい繊維状にして空気を動きにくくする断熱材です。まあ、布団みたいなもので、湿気
(水)を含むと性能が落ちます
プラスチック系は、板形状が多く、大きさが決まっているのが特徴。 荒っぽく説明すると、ビールの泡をプラスチックで固めたような物?。

■ 繊維系断熱材の種類と特徴

グラスウール系
 グラスウールはガラスを繊維状にしたものです。住宅用にはに10kと16k、24kが
(密度のこと)多く使われています。
 利点は、性能の割りに安い、燃えない
(パックされた廻りは燃える)、音を吸収するなどです。
 欠点は、空気や水を通すため、施工内容や、建築構造によって性能低下や、断熱内結露が心配なこと、が挙げれます。
 最近のグラスウール断熱材は、撥水処理したものや、繊維方向を変えたものなど、感心するものが多いです。


 グラスウール・10K   一般住宅での標準的な断熱材で、見た目は、周りがパックされています。 最近は100mmが多く使われてます。
なぜここまで普及しているのかと言うと、値段が安いからでしょう。
(カタログ性能は意外とよいが、施工が悪いと性能低下する)
しかし、この断熱材、正しい施工をしている人をあまり見たことがありません。(TVの建築系番組でも正しく施工されているのはめったに無い)
 カタログ上の熱伝導率は 0.050W/(m・k) * 数値の低い方が高性能だが、厚さとの関係があるので一概に断熱性能は判断できない

■ 
グラスウール・16K、24K  
 北海道の断熱・気密住宅によく使われています。パックされたものと、裸のものがあり、充填工法に多く使われています
 裸の場合、防湿層工事は絶対必要になります。また最近では高性能グラスウール化(繊維の直径を細くすることで断熱性能を上げたもの
 16Kで、24K相当の性能を持っている)が進んでおり、見た目でわかるようにピンク色をしています。
 グラスウールは正しい施工さえすれば価格も安くコスト・パフォーマンス
に一番優れた材料でしょう。

 
熱伝導率は、 16kの場合 0.045W/(m・k)    24K・高性能グラスウール16K の場合 0.038W/(m・k)

 
グラスウール・32K
、48、64K 
 
この密度までなると板状になり硬くなります。 この形状を生かして床下用や外断熱用や付加断熱用などもあります
 撥水加工をしたものも多く、その中には基礎断熱用の製品もあります。
 
熱伝導率は、 32kの場合 0.036W/(m・k)

■ ロックウール系
 ロックウールは玄武岩などを繊維状にした断熱材です(石綿ではない) 性能はグラスウールの24K相当です。利点、欠点もほぼ同じでしょう。
 ただ、一般のグラスウール系断熱材より撥水性を持っていますが、湿気を含んだ時の乾き易さは、ほぼ同じと聞いています。
熱伝導率は、0.038W/(m・k)

■ 天然素材(エコ)系
 国産ではあまり聞いたことが無いですが、輸入品で羊毛など天然素材を使った断熱材があります。
(ポリエステル繊維が含まれる場合もある)
 手元の資料が少ないためなんともいえないのですが、調湿性に優れるため防湿層は不要とあります。本当なのか疑問です。
 また、板状製品として 炭化発泡コルクなどがあります。エコ系は日本では、一部の人にしか使われていませんが、廃棄物処理の点から
 いえば良いかもしれません。 しかし値段が高く、コスト・パフォーマンスも悪いので、まだ現実的ではないと思っています。
 (輸入品のため輸送エネルギーがかかりとてもエコとはいえないという意見もあります)
 
熱伝導率は、羊毛断熱材 0.04W/(m・k)(手元資料による数値をWに換算) 炭化発泡コルク 0.045W/(m・k)

■ プラスチック系断熱材の種類と特徴

■ 
押出法ポリスチレンフォーム 
 当社が外張り断熱に使っているダウ化工のスタイロフォームという断熱材は、この種類にはいります。
 外見は、断熱材のみで出来ていて、小さな気泡が独立しているため、断熱内結露の心配はありません。
 種類として、1種・2種・3種とありますが、普及しているのは1種と3種でしょう
(3種の方が高性能、外張りには、これを使用)
 特徴は、吸水率が低いこと(ほぼ水を吸わない)、燃焼はするが(難燃剤入で自己消火性を持っています)シアン系ガスは出ない点、  
 プラスチック系の中では、コスト・パフォーマンスに優れていること、一般にプラ系はグラスウール系に比べ熱伝導率は低いが、価格は高い)
 また、コンクリートとの相性や吸水率が少ないなどで、基礎断熱として、基礎外側に使われることもあります。
 
熱伝導率は、 1種 0.038W/(m・k)  2種 0.033W/(m・k)  3種 0.028W/(m・k)

■ ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
 発泡スチロールや、EPSとも呼ばれています。燃焼時のシアン系ガスや断熱内結露の心配はありませんが、 
 同じポリスチレン系でも、押出法に比べ、吸水率や熱伝導率も高めになります。
 しかし、特殊形状やパネル化するのに向いた発泡方法なので、厚みのあるパネルなら充分な断熱性能がとれるでしょう。
 また、米国製
(発泡前のビーズで輸入していると思う)のEPSでホウ酸(自然環境内にある物質、エコ系断熱材にも一部使われている)を混ぜた
 防虫性能に優れた断熱材があります。
(プラスチック系の断熱材は白蟻の食害が報告されている。内容が多くなるので他項で詳しく書く予定) 
 パネルや、基礎のユニットもあり暖かい地域や基礎部分など良いと思っています。   
 熱伝導率は、  0.04W/(m・k)

■ 硬質ウレタンフォーム
 ウレタンには硬質と軟質(ソファーの芯などに使用)があり硬質の方が断熱材として使用されています。 押出ポリスチレンより熱伝導率が低く
 断熱内結露の心配はありません。ただ、燃焼時に猛毒のシアン系ガスがよく指摘されます。
(実際に火事になった場合、室内のソファー
 羊毛製品からの発生の方が問題。また、死亡原因は一酸化炭素中毒がほとんどと言う話もある)
 
 ウレタンは、発泡時の接着性や現場発泡の容易さから、配管などの隙間を埋めたり、吹付け断熱工事(板状製品やパネルなどにはまだ
 
難燃材が入っているが、現場使用の製品は入っていない)や、工場でのパネル化に使用されるなど、色々な面を持った材料です。
 板状製品での
 コスト・パフォーマンスは、押出ポリスチレンより劣りますが断熱材の両面に防水紙
(製造工程上必要)があり、
 ジョイントにテープ施工で簡単に気密が取れる利点もあります。

 
熱伝導率は、  0.023W/(m・k) 

■ フェノールフォーム
 フェノール系の特徴はやはり火に強いと言うことでしょう。また燃焼時のシアン系ガスが出ないことや一酸化炭素発生量も少ないという特徴
 も持っています。
(ただし全然燃えないわけでは無いようで高温にさらされると解けるともいわれる) これまでは、性能が特別に高い
 わけではないため、普及されているとはいえませんでした。
 しかし近年、旭化成でネオマフォームという商品が発売され話題になっています。これは、現在、住宅用途で熱伝導率で一番優れた断熱材
 でしょう。(性能では真空断熱材と
いうものもあるがカットできないため住宅には不向)また発泡に代替フロンを使わず炭化水素ガスを使って
 いる点も評価される所です。
(炭化水素系ガスはオゾン層破壊や温室効果もほぼ無い。冷蔵庫の断熱材はこのガスに切替たが、住宅用での
 採用は初めて。他のプラ系断熱材メーカーも切替えに研究しているが、可燃性のガスのため他の断熱材グループでは難しいのかもしれない。
 だが、最近ポリスチレン系断熱材で商品化したと聞いている)
このように性能はいいのですが価格は硬質ウレタンより少し高めになっています。
 メーカーでは、この性質を生かして外断熱工法を推奨していますが、フェノール系特有の吸水性の高さが気になります。
(それと共に、吸った水が
 酸性化して釘などを腐食させる問題がある。雨に絶対濡れないとは言い切れないため、釘やビスの素材を考慮した方がいいかもしれない)

 でも、室内に使うには全然、問題ないでしょう。
 
熱伝導率は、 一般的なフェノール系 0.034〜0.03W/(m・k)   ネオマフォーム 0.02W/(m・k)

■ その他の断熱材、素材の種類と特徴

■ 
天井吹込み工法系断熱材
 ブローーイング工法とも呼ばれ、専用業者が吹込み施工する断熱工事で、主に天井断熱に使われます。
 断熱材は専用の繊維系の断熱材を綿状にしたものを使用し、素材としてセルロースファイバーやグラスウールなどがあります。
 セルロースファイバーは、古新聞紙などを原料としたリサイクル断熱材です。吸放湿性に優れていますが、逆に水分を含んで沈下の原因になります。
 グラスウールも、吹込み後の沈下は起こりますが少ない量です。どちらも10%の吹増し施工をすることになっていますが、セルロースファイバーは
 もう少し、増やしたほうが良いでしょう。金額的なことは、工事を始めるまでは同じなので、吹込む厚さが多いほど割安感は出てきます。
 どちらも防湿工事は必要になってきます、また吹込む際、垂木の間の通気スペースを確保するための、せき板が必要になることもあります。
 熱伝導率は、  セルロースファイバー0.04W/(m・k)   グラスウール18K 0.052W/(m・k)
 

 これから先は、断熱材ではないのですが、住宅によく使われる素材の特徴と熱伝道率を書いておきます。

■ 天然木材
 木は断熱材ではないのですが、素材として見ると非常に優れた断熱性能を持っています。
 桧や杉、など柔らかい木材は、0.12W/(m・k)と高性能グラスウール16Kの3倍ほど熱を通しやすいだけです。

 (ログハウスで30cm位の壁厚があれば、理論上は高性能グラスウール16K、100mmが入れてある壁と同等ということになります。
 でも実際の、ログは構造上隙間が多く、同じように暖かくなるとはいえないでしょう)
また、加工性や、吸放湿性に優れていたりします。
 欠点は、腐朽菌
(白カビの一種)に侵されると腐ってしまうことと、白蟻食害の問題でしょう。
 逆に、腐朽菌の繁殖する環境を作らず、白蟻に食べられなければ100年位は楽に持つともいえます。
 
(木材のことは非科学的に語る人も多く、詳しく書きたいのですが、長くなるので別項で予定してます
 熱伝導率は、  桧、杉など0.12W/(m・k)位   ナラ、サクラなど硬い木材0.19W/(m・k)位  (素材、乾燥率により多少、数値誤差あり)

■ 

 住宅に鉄を使うのは、ハウスメーカーなどで構造に使われている場合がありますが、木造でも住宅金物や釘、ビスに使われています。
 鉄は木材
(桧など)より、約690倍、高性能グラスウール16Kの、2200倍熱を通しやすい性質をしています。
 ですから、構造が鉄の場合は、木造と違い充填断熱では、鉄の部分が熱橋
(その部分で熱を通してしまうこと、ヒート・ブリッジとも言う)
 
となってしまうため、何か対策は、必要になります。( 断熱補強が弱い場合、寒いとか、場合によっては鉄下地に沿って結露して
 カビが生えるなどが考えられる。 寒い地域は、細かい部分も熱橋対策が必要になるため注意が必要です。)

 また木造住宅でも、羽子板ボルトなどの建築金物が貫通している場所や、外断熱などでビスが外れてしまったような所は
 熱橋による結露が起こるため、現場発泡ウレタンなどの対策は必要になります。
 熱伝導率は、  鉄 83.5
W/(m・k) 理科年表より

■ アルミ
 アルミは鉄に比べ錆びにくい、軽いなどの利点があるため、日本のサッシの多くはアルミが使われています。
 しかし鉄に比べても2.8倍、木材(桧など)より、約1960倍熱を通しやすい素材です。
 熱伝導率は、  
アルミ 236
W/(m・k) 理科年表より

■ 
プラスチック(サッシ用)
 
日本以外のサッシ枠は、木かプラスチックが主流です。アルミは米国マービン社のように、室外側に木枠の耐候性UPのための使用が主)
 プラスチックサッシのメーカーは日本にもあり、北海道でよく使われています。
 熱伝導率は、
プラスチック(サッシ用) 0.2W/(m・k) 
 
■ コンクリート
 コンクリートの断熱性はそれほど良く無いのですが、蓄熱性に優れているという特徴を持っています
 
熱伝導率は、 コンクリート 1.6W/(m・k)

■ 
軽量気泡コンクリート(ALC)
 この名前よりヘーベルという方がわかりやすいでしょう。特徴として火に強い、通湿性を持っている、そこそこの断熱性がある、など。
 鉄骨系住宅には、欠点
(火に弱く、熱橋対策が難しい)を簡単に補えるため、外壁部分によく使われています。
 しかし、寒冷地の木造住宅には積極的に使う理由はありません。
(外壁が重くなるので必要な筋交い量が増える。あえて選ぶほどの
 断熱性能では無い。他いくつか)
 コンクリートに比べれば約1/10の熱伝導率ですが、高性能グラスウール16Kと比較すると、4.4倍になります。
 
(仮に50mmのALCで比較すると、11mmの高性能グラスウール16Kと、または、6mmのネオマフォームと同等の断熱性能となります。)
 
熱伝導率は   軽量気泡コンクリート(ALC)  0.174W/(m・k

■ 
石膏ボード、合板
 石膏ボードは住宅のクロスなどの内装下地に12mm、9mmがよく使われています。
 合板は、用途に応じて色々種類がありますが、床下地や、外部耐力壁(2×4住宅の外側合板)
屋根下地など、様々に使用されています。
 
熱伝導率は、 石膏ボード 0.22W/(m・k)  合板 0.16W/(m・k)


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